機械設計者が設計部門で働く場合に主な仕事は3つあります。
・開発部門からの機械引継ぎ
・既存の機械のバージョンアップ
・特別仕様の機械の設計
これらについて共通な仕事内容もあればまったく違った内容をする場合もあります。
小さい機械メーカーの場合はこれら3つ全てやる場合が多いですが大企業の場合は設計部門内でも仕事内容が分かれている場合もあります。
これら3つの仕事について詳しく解説していきます。
開発部門の機械の引継ぎ
機械メーカーの中には開発部門がありそこで新規の機械や要素部品の開発を行います。この部署は0から機械を作り上げ試作検討を行い、量産化しようとするタイミングで設計部門に機械や要素部品を引き継ぎます。
引き継いだ設計部門はここから機械の量産のための設計を行います。
試作機械の図面が開発部門で作られているのにもう一度設計するのと疑問に思う方もいると思います。
試作と量産では考え方が違ってきます。
機械を量産するためには安く、簡単に、早く製造できる機械である事が大切です。そのため試作機から構造の簡略化や材質の変更等を行い量産化できる機械にしていきます。
まずは開発部門、設計部門、製造部門でデザインレビューと呼ばれる打ち合わせを行い量産化するためにはどのうように改造したらよいかを検討します。
検討結果を元に設計部門で変更の検討を行い、変更結果を図面や設計書に落とし込みます。3D図面が用意できると更に説明がしやすくなります。
図面や設計書への落とし込みが終われば再度、開発部門と製造部門とデザインレビューを行います。
開発部門から「この設計じゃ目標の機能が満たせない」
製造部門から「こんな部品を作るのは難しい」等のダメ出しがでます。
このダメ出しを再度機械に反映させます。これを何度か繰り返し、開発部門と製造部門からGOサインがでたら図面の出図を行い1つの仕事が完了します。
既存の機械のバージョンアップ
既存の機械のバージョンアップも設計部門の仕事になります。
この仕事は営業やサービス部門から機械の○○の改善や△△の機能の追加要望が来ます。その要望に応え量産化するための図面を作成するまでが仕事になります。
要望が来た時にまず検討するのがその要望が実現可能かを検討することです。検討内容としては
・技術的に可能か
・コスト的に可能か
この2つを検討します。技術的に可能であってもコスト的に割に合わない場合は対応しません。対応できないという事を営業に伝えるのも設計の仕事です。
ただしコストを極限まで下げる努力も設計者がやならければなりません。これがこの仕事の大変な所です。
コストを下げるためには
・機構や構造の見直し
・材料の見直し
・部品公差の見直し
等
やれる事がたくさんあるためどれから手をつけていいか分からなくなる場合もあります。その場合は上司と相談し一番効果がありそう(値段を安くできそう)な箇所から手をつけます。
コストの見直しを十分に行っても採算が合わないと判断すれば営業にこの案件は対応できないと伝えます。
もし技術面とコスト面で対応可能であれば構造設計→詳細設計→製図→出図の順で仕事を進めます。
全く新しい装置や機能の場合は試作を作りその評価も設計部門でやる事が多いです。
お客様の特別仕様機械の設計
機械メーカーでは標準機と呼ばれる最もスタンダードな機械が必ずと言っていいほどあります。車で言えばノーマルタイプの車です。
オプションとしてマフラーやホイールを改造したりシートの色を変更したりできます。
それと同様に多くの機械メーカーでも同じような対応を取っています。
営業がお客様に機械を売る時に標準機をまずはおススメします。なぜならそれが最も安く納期も一番早いためお客様にとって満足度が高いケースが多いからです。
しかし全てのお客様が標準機とマッチする訳ではありません。お客様の現場の状況により機械に求められる機能は異なります。
そう言った場合は特別仕様で機械を納入します。特別仕様になった場合は新たな設計と部品代が必要になるためお客様は標準機よりも相当高い値段を支払う必要があります。
それを承知頂いて受注した場合に設計部門で特別仕様の分の設計を行います。
まずはお客様のところに営業と同行し仕様の打ち合わせを行います。お客様の要望を詳細に聞きます。営業とお客様が話す場合には機械の詳細まで詰めれていないケースが多いため設計者が細かい仕様について確認します。
この時に実現が難しい要望については断りをいれたり、別の提案をするのも設計者の仕事です。この別の提案ができるかどうかが優秀な設計者とそうでない設計者との違いでもあります。
お客様の要望に対していくつもの選択肢を持てるように日々勉強する必要が設計者にはあります。
お客様との仕様打ち合わせが終わったら既存の機械のバージョンアップと同様に構造設計→詳細設計→製図→出図を行います。
標準機の場合は機械の据え付けはサービス部門だけで行う事が多いですが特別仕様がある場合は設計者も同行し据え付け、試運転の確認を行います。
特別仕様の場合、機械メーカーにとっても初めての試みの場合があるため現場で手直しをする必要があるケースがあるからです。
特別仕様の機械の場合はお客様の現場での運転を確認し仕事が終わります。
まとめ
- 開発部門からの機械の引継ぎは機械を量産化させるのが仕事
- 既存の機械のバージョンアップはコスト計算も大事な仕事
- 特別仕様の場合は仕様打ち合わせからお客様現場確認までする