機械メーカーの中には機械の仕様書を設計前に作成していない会社もあります。
設計をする上で仕様書は必要です。なぜならば設計とは「誰かの要求」を具現化するのが仕事だからです。「誰かの要求」が「仕様書」になります。
仕様書がない場合、設計者は独自で仕様書を作らないといけません。仕様書作成のフローを解説し設計者個人で仕様書が作れるようにアドバイスします。
仕様書作成のフローの中で6W2Hと呼ばれる強力なツールがあります。
- Why(なぜ)
- Who(誰が)
- Whom(誰のために)
- Where(どこで)
- What(何を)
- When(いつまでに)
- How(どのように)
- How much(いくらで)
この8つを押さえることで仕様書ができると言っても過言ではありません。そのためこの6W2Hを押さえそれを材料に仕様書を作成します。
仕様書は設計をする上で必要
仕様書がないのに機械を設計する事ができません。
なぜならば設計とは「誰かの要求」を具現化するのが仕事だからです。「誰かの要求」が「仕様書」になります。
設計の始まり(インプット)は仕様書になります。企画部門や開発部門からの要望の場合とお客様から営業を通じて以来がある時もあります。設計部門から独自にこんな機械があったら便利という意見がでる場合もあります。
どんな場合においても仕様書が必要です。誰からの要望であっても要望を具体化する必要があるからです。
具体化されていなければ口約束となり、最終的に機械が要望通り製造されているかのチェックもできません。
小学生の工作であればそれで良いかもしれませんが会社と会社がお金を通じてものづくりをする場合はそれでは済みません。
要望を具体的な形である仕様書として残す必要があります。
設計のインプットとアウトプットについてはこちらの記事も参照して下さい。
仕様書を作る時のフロー
では仕様書を作成するための考え方の一例を出します。それが下の表です。
市場調査 ↓ |
競合調査 ↓ |
6W2Hの作成 ↓ |
仕様書 |
設計者のための仕様書作成フロー |
まずは市場調査を実施します。今作ろうとしてる物が世の中に受け入れられそうかを調べます。調査方法はお客様への聞き込みやネット、本、街頭アンケート様々な方法があります。
この時、どんな物であれば売れそうなのかを予測しておく事も大切です。
市場調査の後は競合の調査を行います。市場調査の結果世の中にニーズがあっても競合の機械がすでに世の中にたくさんあり明らかに勝ち目がなさそうな場合は参入が難しいです。
また既に重要技術に対する特許を習得しているかもこの段階で分かっていると設計時に特許技術を冒してしまうミスも防ぐ事ができます。
競合機がある場合でも必ず機械の弱点があります。信頼性に欠ける、メンテナンス性が悪い、価格が高い。弱点がない機械はないのでその洗い出しも企画書を作る上で大切です。
市場調査、競合調査を終えたら仕様書づくりのメインである6W2Hの作成になります。
仕様書作成後は設計書を作成します。設計書については以下の記事で解説しています。
6W2Hが仕様書の基礎
6W2Hとは以下の英語の頭文字を取っています。
- Why(なぜ)
- Who(誰が)
- Whom(誰のために)
- Where(どこで)
- What(何を)
- When(いつまでに)
- How(どのように)
- How much(いくらで)
これらを具体化していく事によって仕様書を作成する事ができます。逆に言うとこれらを考慮していない場合は仕様書の項目漏れです。そのため6W2Hづくりは完璧な仕様書づくりのベースになります。
では1例として洗濯機のスイッチ設計の6W2Hを作成してみます。設定としては既に販売中の洗濯機でスイッチが押しづらいと多数クレームが入ったため営業部門より設計変更の依頼があったとします。
Why(なぜ) | 顧客から弊社○○型洗濯機のスイッチが押しづらいとクレームが多数入ったため | きっかけとなる理由 |
Who(誰が) | △△会社 洗濯機設計部 | 担当者を具体的に入れてもいい |
Whom(誰のために) | 洗濯機を使用する老若男女 外国人も含む |
最重要。使用する人物を想定する |
Where(どこで) | 室内の洗濯機置き場 屋外での使用は想定しない |
使用環境 |
What(何を) | ○○型洗濯機のスイッチ | 開発、設計する物 |
When(いつまでに) | 商品販売:1年後 設計期間:半年 |
具体的なスケジュール |
How(どのように) | 押しボタンスイッチからタッチパネルへの変更 | 要望を満たすための方法。仕様書作成の段階で不明な場合は空欄でも可 |
How much(いくらで) | 洗濯機販売価格:8万円 開発、設計費:500万円 |
具体的な販売価格や開発費 |
このように6W2Hを埋めていきます。分からない場合や不明な点は空欄でも構いません。特にHow(どのように)は仕様書作成の段階では決まっていない事が多いです。
設計課題として空欄にしておき、開発や設計時に決定と記載するのも1つの手です。
6W2Hの中で最も大切な項目が赤字で記載したWhom(誰のために)です。機械を使用する人物を具体化していく事で設計時に考えないといけない事を事前に洗い出しておくことができます。
今回は老若男女と抽象的な表現ですが身長や力の大きさを想定する方法もあります。
6W2Hを作成できたらこれを文書化するだけです。仕様書、企画書の書き方や6W2Hの更に詳しい説明は以下の本を参照して下さい。