設計書がない設計なんてあり得ない。機械設計士であれば必ず設計書を作る

機械設計者の仕事は図面を描く事と設計書を作成する事です。

しかし世の中の設計者の中には設計書を書かない(書けない)設計者もいます。

設計書は主に3つの理由から書く必要があります。

  • 仕様を満たす設計案の根拠を他者に示すため
  • 不具合が起きた時の見直しのため
  • 機械の改善、改造をしやすくするため

これらの理由のため設計書を作成する必要がありますが機械メーカーでは「忙しさ」や「過去の実績をベースにしている」という言い訳をして作成していない企業も多いです。

設計書作成の仕組みは会社全体で取り組む必要がありますが設計者個人からまずは作成する事もできます。

簡易設計書DQDを使用すれば設計課題の摘出から設計審査までを1つのフォーマットで網羅する事ができます。今回の記事でもDQDを紹介しますが以下の記事でも解説しています。

 

目次

設計書の必要性

設計書は主に3つの理由から書く必要があります。

  • 仕様を満たす設計案の根拠を他社に示すため
  • 不具合が起きた時の見直しのため
  • 機械の改善、改造をしやすくするため

仕様を満たす設計案の根拠を他者に示すため

機械設計は設計者が自発的に設計を始める事はあり得ません。

必ずインプットがあり、インプットに基づき機械を設計します。インプットは仕様書(設計仕様書)と呼ばれます。

設計者は仕様書を確認し、提示された仕様を満たす為の機械を考えます。最終的には組立図や部品図としてアウトプットされます。

機械設計者のインプットとアウトプットは以下の記事でも解説しています。

 

仕様を満たすであろう機械を設計できているか、できていないかの判断を設計者以外にも示す必要があります。

設計者以外とは他の設計者、自分の上司、開発部門、製造部門、品質管理部門、お客様、協力企業、場合によっては国家機関です。

自分以外の全ての人に設計の根拠を示すことができる状態でなければいけません。それが設計書となるのです。

設計案が妥当かどうかの判断はデザインレビュー(設計審査)で審査をされ承認された案のみが実際に製造部門に進む事ができます。

デザインレビューの際にも設計書がなければ他者に案の説明をする事ができません。

不具合が起きた時の見直しのため

ものづくりにおいては1回目で100点満点の物を製造できる事は現実的ではありません。

試作の段階で不具合が見つかることもあります。製造されてから不具合が見つかることはまります。あってはならない事ですが製品を出荷されてから不具合が見つかることがあります。この場合はリコールが発生します。

不具合が見つかった時、機械メーカーは不具合の原因を探します。原因は製造、品質管理、設計、その他の部門の可能性があります。

その中で設計部門は機械がそもそも設計段階でどんな想定をしていたのか確認しないといけません。

例えば人用の体重計の設計を考えます。体重計の測定範囲は0kgから200kg以下と設計したとします。それ以上の荷重は想定しません。

もし300kgの人間が体重計に乗って、体重計が壊れても設計上は問題ありません。

設計書に想定体重を体重計メーカーであれば書かれているはずです。もし設計書がなければそもそも設計でどんな荷重を想定していなかったが分からなくなります。

もし設計書がなければ設計上で問題があるかないかの妥当性を判断できる材料がなくなってしまうのです。

機械の改善、改造をしやすくするため

導入した機械を改善する事が生産機械ではよくあります。

新規の機械を買い替えるにはお金の面で難しいので部分的にバージョンアップをして新機能の追加や信頼性をアップさせる狙いです。

その際現在の機械の仕様がどのうな考えの元作られているか分からなければ、バージョンアップする事はできません。

設計のベースとなる材料がないからです。

生産機械製造メーカーでは数十年使用された機械の改造は一律で断ることがあると聞いたことがあります。その理由は当時の設計書がないため改造工事をするための設計をする事ができないからです。

今現在のためだけではなく未来のためにも設計書は必要になります。

日本の機械メーカーで設計書がない理由

上記のように設計書は機械メーカーにとって必須であるはずなのに書かない設計者がいます。その現状を会社として放置しているところもあります。

その理由は2点あります。

  • 設計者の忙しさ
  • 過去の機械の流用設計が多いから

設計者の忙しさ

設計者、特に機械設計者は日々ものすごく忙しいです。

機械の納期に追われています。納期の設定はもちろん機械設計者で管理する事ができません。納期はお客様と営業で決められ、設計者が口を挟める場面は少ないです。

お客様は機械の注文を入れてから1日でも早く機械を納入して欲しいと考えています。生産ができない機会損失を防ぐためです。

そのため営業に短納期を要求します。営業も機械を買って欲しい、かつ売上を一日でも早く上げたいと考えているので短納期を約束してしまいます。

そのしわ寄せが設計部門にくるのです。

設計者は短納期に間に合わせようとするため1日でも早く図面を描きあげて出図をしたいと考えます。そのため設計書は後回しになります。

なぜなら設計書はお客様に提出するわけではないからです。だから設計書を作成してもしなくても売上には関係ないからおざなりにされるのです。

過去の機械の流用設計が多いから

多くの機械で技術がある程度確立してきました。成熟してきたとも言えます。

そのため0から機械を開発する事が昭和の時代に比べて大変少なくなりました。ほとんどの機械で以前の設計した図面の流用が多いです。これを流用設計と言います。

流用設計の問題点についてはこちらの記事でも解説しています。

 
流用設計する時に設計者はいちいち設計書を書きません。なぜなら過去に設計した時にきちんと検討して問題ない事を確認しているだろうと考えているからです。

また過去に実績があって特に問題が報告されていないのであれば大丈夫だろうと考えます。何十年も使われて問題がないのであれば今回も大丈夫な確率が高いから検討も必要ないと判断しがちです。

設計者の上司も過去に実績があるなら「大丈夫だろう」と確認や検証の必要性がないと判断する事が多いです。これは上記の設計者は時間がないという事も要因の1つです。

そのために流用設計の場合は設計書を作らずに図面だけ作成して設計完了としてしまう事が多いです。

簡易設計書で設計書を設計者個人で作る

設計書は機械メーカーや設計者にとって必要だが実際は時間の関係で作られていない事が多いです。

会社として設計書を作るという仕組みがない会社もあります。しかし会社として仕組みがないからと言って設計書を作成しなくていいのでしょうか?

設計書を作成する事は会社の為でもありますが設計者本人の為でもあります。

設計書を書く事で個人スキルが間違いなくアップします。ミスの手戻りも減ります。

なぜなら設計書は設計者の頭の中で考えている事をアウトプットしたからに過ぎないからです。頭でぼんやりと考えている事を文字や絵としてアウトプットする事により漏れやミスがない事を確認できます。

確認は自分自身だけでなく他の設計者や上司にも確認してもらえます。頭の中にあったら決して確認はしてもらえません。

そのため設計書は設計者の能力アップやミス防止に役立ちます。

では設計書を作成しましょうと言っても何から始めていいか分からないでしょう。

簡易設計書DQDの作成方法はこちらの記事を参照して下さい。

 
詳しい作成方法やDQDのサンプル例については國井技術士が書かれたこちらの本で解説しています。

ついてきなぁ! やさしい研修編-機械設計の企画書と設計書と構想設計-

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