中小企業の機械設計は簡易設計書DQDを使いこなす

機械設計をする際に必要になるのが設計書です。

設計書には設計者が提案した案とその案に至った根拠が示された書類です。

設計書を作成する為には膨大な時間とマンパワーが本来は必要です。その為中小企業でマンパワーが弱い会社であれば設計書作りに苦労していたり設計書がない会社や部署もあります。

その問題を解決るのが簡易設計書DQDです。DQDは國井技術士設計事務所の國井技術士が中心になって考案した設計書です。

今回の記事では設計書が必要な理由と簡易設計書DQDの作成方法について解説します。

目次

機械設計は案への根拠が必要である

設計の仕事はインプットである仕様書を元に仕様を満たすための案を示すことです。

案とは設計書であり図面になります。機械を作るためには図面さえあれば良いので設計書は必要ないと考える設計者もいます。

しかしそれは間違った考え方です。図面を作成するにはインプットである仕様書がありそれを満たす為にどういった形、動き、部品、材質がいいかを検討し検討した結果が図面に現れます。

もしそういった検討を一切していないのであれば設計者失格です。それは設計とは言わずに勘だけが頼りの工作です。

設計であれば必ず自分が出した案(図面)の根拠があります。その根拠となるのが設計書です。

「俺はきちんと検討しるんだ!」と言われる設計者がいます。その人達に「検討した内容を見せて下さい」と伝えると、「頭の中でした」、「計算したメモは捨てた」と言います。

それでは意味がないのです。検討した内容を書類として残しておかなければそれは検討していないのと一緒です。

設計書(根拠)がない場合例えば以下の問題が出てきます。

  • 機械に不具合が見つかった時への原因究明と対策が遅れる。(1から検討をやり直す)
  • 設計した者以外に案の根拠の説明ができない
  • 機械の改造をしようと考えても設計した者以外は理解ができない
  • 設計案が仕様を満たすことができるかどうかの審査ができない

こういった問題を起こさないために設計者は設計時に必ず設計書を作る必要があります。

設計のフローについては以下の記事でも解説しています。

日本の設計フローは大企業と中小企業と零細企業で違う事を理解する

中小企業や零細企業が設計書を作らない理由

設計書は上記の理由から必ず必要です。しかし中小企業や零細企業では設計書がない会社があります。

その理由は設計書がなくても品物(機械や部品)ができてしまうからです。

どの機械メーカーでも設計書が必要であるという事は十分理解をしています。しかし設計書を作成するのに時間が掛かる代わりに一切お金になりません。

機械メーカーの商品は機械であって設計書ではないからです。設計事務所であれば図面や設計書はお金になりますが。

お金にならないものを作成する時間はありません。そのため設計書を作成しない企業が多いのです。

簡易設計書DQDが中小企業には向いている

マンパワーや時間がない会社が設計書を作るためにはできるだけ作成が簡単でかつ設計書として有効な書類が求められます。

それが國井技術士設計事務所の國井技術士が中心となり考案したのがDQD(簡易設計書)です。

DQDは構成内容は以下のようになっています。

設計課題 主要諸元 設計検証 設計審査

設計課題を抽出し課題に対する案を立案する、そしてその検証情報を記載し審査結果の判断を最後に記入する。

このDQD作成を進めれば設計が完了できる大変便利なツールです。

簡易設計書DQDの作り方

簡易設計書DQDの作成方法について解説します。

詳しい作成方法やDQDのサンプル例については國井技術士が書かれたこちらの本で解説しています。

ついてきなぁ! やさしい研修編-機械設計の企画書と設計書と構想設計-

DQDは大まかに以下の項目に分かれています。

  • 設計課題
  • 主要諸元
  • 設計検証
  • 設計審査

設計課題

まずDQDでは設計課題の抽出を行います。

設計課題とはインプットである仕様書に記載のある項目です。

例えば車の仕様書であれば必ず燃費があります。そのため車の設計課題の項目の1つには燃費が入ります。このように仕様書に記載のある項目全てが設計課題になります。

また仕様書に記載のなくても常識的な事についても設計課題として記載します。

例えば安全性です。わざわざ車の仕様書に「安全である事」とは書きませんが車は人が乗るため人命の安全は必須項目になるため記載します。

設計課題に漏れがあると製造される機械に不具合が出る恐れがあるので考えられる全ての課題を書き出しておきます。

主要諸元

主要諸元は設計課題に対する解決案を記載します。

例えば燃費20km/Lという課題があれば車体を従来より50kg軽くすると提案します。また言葉で表現する事が難しいのであれば3D図を記載するのもおススメです。

設計書は設計者だけではなく企画者や生産技術、製造部の人達も見る可能性があるので誰が見ても分かりやすい形で表現するべきでしょう。

設計検証

主要諸元の後には設計検証を書き込みます。

これは主要諸元で提案した案に対する根拠を入れる欄です。

なぜ設計課題(仕様)を主要諸元諸元で提案した案で満たすことができるのかの根拠をここで提示します。

計算書や過去の図面、過去の実績情報があればエクセルのハイパーリンク機能を使いすぐに書類まで辿り着けるようにしておきます。

十分な根拠がなければ次の設計審査(デザインレビュー)で却下されてしまうのでしっかりと根拠を持って説明できるような資料を作成しておきましょう。

設計審査

最後に設計審査(デザインレビュー)の結果をこちらに記入します。

「承認」か「却下」のどちらかが入ります。承認されればこの設計課題については次の工程に進む事ができ、却下されたら再検討します。

設計書に設計審査の欄を設けることで審査員もこのDQDを見ていけば「設計の課題」、「課題に対する提案」、「提案の根拠」を一目で理解する事ができます。

このような流れでDQDは作成していきます。

設計フローについてはこちらの記事でも解説しています。

日本の設計フローは大企業と中小企業と零細企業で違う事を理解する

まとめ

  • 設計者は設計書を必ず作る必要がある
  • 中小企業や零細企業では設計書を作る余裕がない
  • 簡易設計書DQDを使えば従来に比べると容易に設計書を作成できる
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