機械設計管理職の悩みの1つが部下のスケジュール管理ではないでしょうか?
少ない人員で厳しい納期を守らないといけない現場で適切なスケジュール管理ができると胸を張って言える管理職の方は少ないです。
なぜならば機械設計者のスケジュール管理程難しいものはありません。
設計課題であるタスクを事前に全てを把握できないので大雑把な仕事の分配をせざるを得ないからです。
しかし十分なタスク管理ができなければ管理職自身が日々の業務に疲れてしまいます。
そしてチームも崩壊するでしょう。
本記事ではなぜ設計者のスケジュール・タスク管理が難しいかを解説します。
部下の仕事内容を把握できないリスク
多くの機械設計管理職の方は自分自身も設計者だと思います。
設計者は誰かに管理される事を嫌い、自分も上司から若手設計者時代に”強い管理”や”細かく鬱陶しい指示”をされた経験があるはずです。
この経験から部下にはある程度自由でのびのびと設計をさせてあげたいと強く想っていたり、強い想いはないが心の片隅には置いている方が多いです。
しかしこの”自由”を重視するあまりタスク管理ができていない管理職が多いのも事実です。
私がツイッターでアンケートを取った結果、実に30%の設計者がタスク管理をされていない事が分かりました。
このデータから世の中の機械設計者の30%はツール云々の話ではなく管理がされていない事が分かります。
管理をしていなくても業務が問題なく回り、会社としても利益が出て各設計者もやりがいと給料が十分得られているのではあれば問題はありませんが決してそうではありません。
タスク管理が不十分な現場では
- 部下に仕事を振ることができない
- 管理職自らが現場仕事をする
- 部下を正しく評価できない
こういった課題を抱えている事が多いです。
部下に仕事を振ることができない
タスク管理がされていない設計現場では部下に仕事を振ることができません。
タスク管理のレベルにもよりますが優先順位付けがされていない場合、誰がどのくらいの緊急度の仕事をしているのかを把握できません。
当たり前ですが設計者はパソコンの前で作業をしていますがこれをずっと見ているのではないので誰がどのような作業にどれくらいの時間を使っているのかを把握できません。(ITの力を使って把握する事はできると思いますがそれは時間の無駄でしょう)
管理職の方は「あいつはCADでモデリングしてるな」、「あいつはミスミで購入品の調べ物をしているな」くらいの把握です。
工数の管理や日報を入れている会社も多いですが大雑把な入力になり、具体的な設計タスク管理ではありません。
そもそも設計者の仕事はルーチン業務ではないので管理がとても難しいです。
突発的な仕事も入ってきたり、設計ミスや現場での要請で手戻り作業もあります。
こういった中で優先順位がないタスク管理をしている、またはタスク管理をしていなければ誰にどんな仕事を振っていいか分からず、適切な仕事の分配作業ができません。
一昔前であれば「どんなに残業をしても仕事をやり切れ!」と平然と言えることができましたが今は36協定をしっかり守り、有給消化率も上げながら部や課のグループとして利益を出す事を求められています。
今後この傾向は強くなるでしょう。
その時にタスク管理をしていなければグループが崩壊してしまう可能性があります。
管理職自らが現場仕事をする
部下に適切な仕事分配ができない場合、管理職が自ら設計作業をするかパワハラ覚悟でも部下に無理やり仕事を押しつけるこの2つの選択肢になります。
管理職まで出世した方であれば後者の選択をする事はなく、自ら手を動かして設計作業等の仕事をする事になるでしょう。
なぜならば仕事をやらないという選択は会社員としては取ることができず上から与えられたノルマについては絶対とは言いませんができる限りの努力をして結果を出す事が当たり前だからです。
これが管理職の辛いところだと思います。
プレイングマネージャーとして設計を一定程度やるのがデフォルト(通常)となっている部署も多いとは思いますが管理業務が疎かになるまで現場仕事に注力してしまう状況は危険です。
部下の仕事内容を見てアドバイスを送る時間を削り、自分はひたすら作業をこなしていく。
この状況が続けば部署がチームではなく個人商店の集まりになり、何か問題があっても誰も分からない、誰かが退職したらまた0から仕事をしないといけない、こんな状況になりかねません。
また管理職の方が自分で設計作業をするために残業と休日出勤をこなす状況になれば自分自身が辛くなります。
頑張っていても管理職だから残業代もでない、かつ自分のプライベート時間や家族との時間も少なくなりQOL(生活の質)はどんどん下がっていく状況になります。
部下を正しく評価できない
設計のタスク管理ができないと部下の評価を正しく行う事ができません。
なぜなら誰が何を行いどういった成果を出したのかが分からないので評価できないからです。
タスク管理は仕事を分配するだけに使われる訳ではありません。
その後の評価にも活用する事ができます。
設計業務で大切な事はPDCAを回す事であり、設計での失敗を次の設計に生かす、良かった事は続けて周りの設計者にも横展開していく必要があります。
場当たり的な仕事分配では設計完了後の仕事の評価をする事ができません。
繰返しになりますが設計者の評価ほど設計管理職にとって難しい仕事はありません。
人の評価、とりわけ非定常業務をしている部下の評価は機械設計業務よりも数段難しいと筆者は考えています。
同じ非定常業務である営業であれば獲得件数や売上で評価する事ができます。
しかし機械設計者を含めて設計者の評価というのは分かりやすい数字というのが存在せず、曖昧な雰囲気で決まっている事が多いです。
これは仕方がない一面もありますが、上司に適切な評価基準を持っていないと部下は不満が貯まる一方です。
設計者がどんなに難しい仕事をやり遂げても誰にもその難易度を理解されずできるのが当たり前という雰囲気であれば設計者の日々のモチベーションは下がり続けます。
給料が上がらないのは世の中の景気や会社の利益によっても大きく左右さるので仕方がないと設計者も考えますが自分の仕事が誰にも理解されない辛さは我慢する事ができません。
上司である管理職の方がタスク管理をしっかりと行い仕事の難易度、重要度の評価付けをあらかじめ与えておけば、設計者の評価基準にもする事ができます。
もしタスク管理を行わず、設計者の評価も曖昧な基準で決めている状況が続けば大切な部下を失っていくことでしょう。
設計者のタスク・スケジュール管理が難しい理由
上記で機械設計の仕事のタスク管理をしない事のリスクを述べましたがこの事は普通の感覚を持っている管理職であれば誰もが理解している内容だと思います。
しかし実際に自部署のタスク管理を行っていて十分に機能していると胸を張って言える管理職の方は少数派ではないでしょうか。
なぜなら設計者のタスク管理は相当難しいからです。
その理由は主に4つです。
- 自部署のタスクを把握しきれない
- 管理ツールが会社で統一化されていない
- 他部署との連携
- 厳しい納期
自部署のタスクを把握しきれない
タスク管理が難しい最も大きな理由が自部署のタスク管理を把握しきれないからです。
まず機械設計のタスクの切り分けの仕方が大雑把過ぎる事が多いです。
よくある切り分けはAユニットはAさん、BユニットはBさんのような分け方です。
このやり方は設計者への仕事の丸投げです。
そのためタスク管理のやり方としてはAユニット、Bユニット、Cユニットの進捗を管理するという形になります。
非常にシンプルで分かりやすいのですがこれは管理をしているとは言えません。
機械設計をやってきた管理職の方であればご存知でしょうが設計というのは設計を進めていく中でどんどん課題がでる性質があります。
Aユニットの設計を進めていく中で、機能を満たす事が難しそうな箇所が発生したり、コスト的に厳しいのが初めて分かる事が多いです。
そうするとこれが新たなタスクとなり設計者はこのタスクを解決する必要がでてきます。
設計を進めて初めて分かったり、気づくタスクを管理する仕組みがあればいいのですがユニット毎の大雑把なタスク管理ではまず無理でしょう。
またこういった設計前の段階で分からなかった課題は設計者が自分でサラッと解決してしまう事もありタスクとして認識されない事が多いです。
そうすると管理職としてはタスクが把握できないのは当たり前で全ての問題を解決できるスーパー設計者ばかり揃っている部署であればいいですが、そうでない場合は他の設計者の助けが必要かどうかも分からず、納期の直前になって初めて遅れる事が分かるといったケースもあります。
設計者に仕事を振る段階で全てのタスクを把握できず大雑把にしか仕事を伝える事ができない仕事の属性であることが機械設計のタスク管理の難しさです。
管理ツールが会社で統一化されていない
設計タスクの管理ツールが会社内で統一されていない事も管理者のタスク管理が難しい理由の1つです。
多くの設計現場ではエクセルを使って設計タスク管理やスケジュール管理を行っている事がツイッターでのアンケート調査で分かりました。
エクセルでは大日程のスケジュール管理は可能ですが細かなタスク管理は不可能と筆者は考えています。
個々の案件に対する課題を評価したりする事はできますが部署が抱えている全てのタスクは管理しきれないと思います。
またエクセルは共有性が低く、一対一のコミュニケーションはできますが部署内または設計部署以外と連携してスケジュール管理するのには非常に不向きなソフトです。
そうするとタスクが共有されずに個々の設計者が個々の案件、設計タスク毎にエクセルファイルを作ってしまい管理職としてはタスク管理ができなくなってしまいます。
他部署との連携
機械設計の部署は他部署と連携して仕事を進めます。
営業部、企画部、電気設計部、製造部、サービス・メンテナンス部。
こういった部署と常に関りを持ちながらプロジェクトを進行させるので設計タスクが常に増えていきます。
例を上げるとお客様から受注をもらい仕様も決め設計に入った段階で別仕様に変更してくれといったケースです。
そうするとまた1からの設計になるためタスクが大幅に増えます。
お客様都合以外でも電気設計から制御盤をもっと大きくしないと電気機器が入らないといった注文が設計の途中で言われたりします。
機械設計者としては事前にそういった仕様は決めてくれと思いイライラもしますが何とかやらないといけません。
自部署内で完結できる仕事ではないため、機械設計の管理職は細かなタスクまで把握する事ができず大雑把なタスクを担当者に振ることしかできないのです。
厳しい納期
現在の設計現場に求められている納期が厳しいのも管理職がタスク管理をするのが難しい理由の1つです。
本来であれば納期が厳しいのであれば細かくタスクを管理し優先順位の高い仕事に設計者を充てなければいけません。
しかし設計作業が属人化している現場の場合は仕事を振ってもまずは担当者がヘルプ者に作業内容やその案件独自のルールを伝えないといけません。
ただでさえ厳しい納期で忙しい担当者が丁寧に説明したり、ましてや資料を作っている時間はないでしょう。
そうなると担当者にとにかく残業をしても休日出勤をしても頑張ってくれとお願いをする方法になります。
納期に余裕があれば残タスクの洗い出しから行えばいいのですが全く余裕がない納期をこなすためにはタスクの洗い出しよりも現在の課題を担当の設計者がどんどん片づける方が短期的に良い事が多いのです。
ただしこういったやり方を続けているのであれば設計のタスク管理・スケジュール管理は夢のまた夢でしょう。
タスクを管理できればスケージュール管理がやりやすい
機械設計管理職がスケジュール管理ができないのはタスク管理ができていないからです。
十分にタスク管理を行う事ができれば優先順位の高い順に設計者に仕事を振ることができます。
このように言葉にすると簡単な事ではありますが上記で再三述べたように設計者のタスク管理をする事は非常に難しいです。
エクセルのような共有性が低いソフトを使っていれば部署全体でスケジュールを管理するのは難しくなります。
タスク管理をするには管理職だけでは100%無理です。
各設計者が設計する中で新たに発生するタスクを常に部署全体のタスク管理ツールにアップデートしていかなければいけません。
しかしその作業は面倒な作業でそれをやったところでタスクが減る訳ではなく、逆にメンバーからは余計な仕事を増やしてくれたなと思われてしまう可能性もあります。
このようにタスク管理は簡単ではありません。
しかしタスク管理を行わず設計者の力量に頼っている設計現場は脆い存在でありいつ崩壊してもおかしくありません。
強い設計現場にするために管理職、設計者、その他の部署を含めて誰もが簡単に閲覧、入力できるITツールが不可欠です。
それはエクセルやグーグルスプレッドシートでは難しいと筆者は考えています。
ではどんな設計管理ツールが世の中にはあり、皆さんの設計現場に合っているかをこちらのページで解説していきます。