私は機械設計者として様々な製造メーカーの現場に足を運んでいます。
その中でも製薬メーカーの製造現場は機械の導入や工事をする際、他の現場にはない苦労がついて回ります。
薬という人体に多大な影響を与える物を製造する現場特有の厳しさです。
今回の記事では筆者のこれまでの経験を踏まえて製薬メーカーで工事をする際の注意点を紹介します。
製薬会社ではGMPを遵守しなければいけない
医薬品の製造所で最も遵守しなければいけない事はGMPです。
GMPは薬を作るためのレシピと手順です。これは薬を製造する前に厚生労働省に届出を出してこの方法で薬を製造しますと約束します。
そのためGMPから逸脱することは何があっても許されません。逸脱してしまえば最悪の場合、業務停止命令等の法的装置を取られます。
2020年12月に福井県の小林化工が水虫薬に睡眠導入剤を混入させてしまい製品の回収をしなくてはいけなくなりました。
当然製品に異物が混入しては絶対にいけません。異物には人間の頭髪等の日常生活であれば起きてしまう事でも製薬の現場では絶対に許されないのです。
GMPについては工事業者が事前に学ぶ必要はありません。多くの製薬工場では入場前に15分程度入場者教育を受けます。
この15分だけでは100%の理解はできません。そのため現場での作業中分からない事があれば製薬メーカーの担当者に直接聞きましょう。
1番やってはいけない事は独断で作業をしてしまう事です。「これぐらいはいいだろう」と思ってる事が医薬品製造現場では禁止事項の場合があります。
また同じ医薬品製造現場でも各メーカーによってルールが異なるので担当者の指示に従う事を徹底するのが重要です。
製薬現場での服装
医薬品製造現場では専用のクリーン服を着て薬を製造しています。なぜなら薬に異物が混入する事を防ぐためです。別の理由では作業者の安全を守るためでもあります。薬によっては人体に大きな影響を与えるものもあるからです。
クリーンルーム内で工事業者が作業する時は製造現場の作業者と同様にクリーン服を着て作業をします。この時は以下の事に注意します。
- クリーン服は正しく着用
更衣室に見本となる写真が必ず存在しますのでそれにならって着用します。分からない事があれば担当者、もしくは社員の方に聞きましょう。
服装が乱れていた為に担当者の方に怒鳴られている業者を何人か見たことがあります。そうすると雰囲気も悪くなりお互い仕事がやりづらいです。時間が掛かってもいいので正しくクリーン服を着用しましょう。
- 不要な装飾物は外す
薬を製造する現場(クリーンルーム)には不要な物は持ち込ませない。必要最小限な物しか持ち込ましてはいけない原則があります。そのため時計、ピアス、ネックレス、その他のアクセサリーは更衣室で外します。
可能であるならばクリーンルームに入る日はそういった物は身につけない方がいいです。工事業者が集中するゴールデンウィークやお盆は外部者用のロッカーが埋まっておりロッカーが使えない事があります。
そういった時はハンガーのみで着替えた物を保管しなければいけません。高価な物や大切な物は盗難の恐れがあります。そういった物は当日は身につけないようにしましょう。
- 女性はお化粧に注意
女性の場合はお化粧にも注意しなければいけません。お化粧は化学製品であり薬へ混入すると大変危険です。
製薬メーカーによってはクリーンルーム内に入る際はお化粧を全て落とす事を徹底している会社もあります。こういった現場は非常に稀ですがお化粧禁止の現場もありますので女性がクリーンルーム内で作業する場合は事前に担当者の方に確認をしておきましょう。
持ち込み物
クリーンルームには4原則が存在します。
- 持ち込まない
- 発生させない
- 堆積させない
- 排除する
この中で持ち込ませないについては工事業者にとっては頭が痛い課題です。
工具はできるだけ多く持ち込み、不測の事態に備えたいですが薬の製造現場の観点から見ると持ち込み物は少なければ少ない方がいいです。
それもコンパクトに収まっていた方がいいので可能な限り工具箱にいれましょう。工具箱にはいらない大きな機材は蓋のできるオリコン(折りたたみコンテナ)に入れるのがおススメです。
段ボールは虫の発生が考えられる為、持ち込みを禁止している製造現場が多いです。部品も段ボールでは持ち込まずに緩衝材を巻いてオリコンに入れて持ち込みしましょう。
製薬現場の服装、クリーンルームお役立ちリンク
製薬現場の服装についてはこちらの記事に詳しい記載があります。
クリーンルームについてはこちらのサイトで学ぶ事ができます。
以上