機械メーカーでは必ず機械に対して計画図と組立図が存在しています。
計画図、組立図どちらも機械設計者が作成しています。
計画図はこれから生産する機械の設計案として描きます。
組立図は機械を組み上げるためやお客様が機械を確認する時の為の図面です。
描かれている情報は似ている事が多いためこの2つの違いについて理解している機械設計者も少ないです。
今回はこの2つの図面の違いについて解説します。
計画図は設計案である
計画図はこれから生産する機械の設計案です。
計画図には主に以下の情報が記載されています。
- 機械形状と構造
- 機械外形寸法
- 機械に使用されている部品
計画図は他の機械設計者、電気設計者、企画開発部門、製造部門の人達に向けて描かれた図面です。
設計のインプットである仕様書を満たす機械はこうですよと提案するための道具とも言えます。
計画図は言わば「設計者の提案書」という事ができます。
計画図に載せる情報や描き方については以下の記事を参照下さい。
組立図は機械組立者とお客様用の図面
計画図は他の設計者や関連部門向けの図面でした。
一方組立図は2つの人達向けの図面です。
- 機械の組み立て者向け
- 機械を使用するユーザー(お客様)向け
機械の組み立て者
機械の組み立て者は部品から機械を組み上げていく人達です。
彼らは組立手順書や組立図を見ながら機械を組み上げていきます。
組立手順書には以下の事が書かれています。
- 機械の組み立てる順番
- 使用工具
- 注意する点
手順書を読めば機械を組み上げる事ができるようになっています。
文字だけでなく写真や絵も使わています。
しかし手順書だけでは機械全体のイメージやどんな部品が何個使わているか「一目」で理解する事ができません。
そのために組立作業者にどんな部品がどのような配置でどの寸法で組む必要があるのかを理解してもらうために組図が必要になります。
機械を使用するユーザー(お客様)
組立図は機械を使用するユーザー様向けの図面でもあります。
機械を買って頂いたお客様には必ず機械の取扱説明書を渡します。
取扱説明書には機械の使用方法や安全面についての情報が記載されています。
その他に機械がどのような部品で構成されているかを示している組立図も記載します。
取扱説明書に組立図を載せる理由は機械に不具合やトラブルがあった時にメーカー側とユーザー側で意思疎通を正確に行うためです。
例えば機械のある部品が故障した時に組立図があればお客様は「組立図に描いてあるAの部品が欲しい」と伝える事ができます。
もし組立図がなければ「長さ100mm程度のシャフトで先端にネジが切ってある部品」のように曖昧な伝え方しかできず間違った部品を購入させてしまう原因にもなります。
そのため組立図を取扱説明書に記載する必要があります。
組立図に記載する情報
組立図は2人の人達に向けた図面でした。
- 機械の組み立て者向け
- 機械を使用するユーザー(お客様)向け
この人達が必要とする情報を記載してあげる必要があります。
機械の組み立て者向けの組図
機械の組み立て者に対しては以下の情報が必要になります。
- 機械形状と構造
- 機械に使用されている部品
- 組立寸法
機械の形状と構造は組立をするのに必須な情報です。
もし多数の部品がついている場合は組立図を複数の図面に分ける場合がります。
機械を複数に分ける事をユニット分けすると言います。
AユニットにはA組立図。BユニットにはB組立図と組立者に分かりやすいようにユニット分けしましょう。
無理して1枚の図面に描かずに複数に分けてあげる方が組み立て者にとっては見やすいです。CAD上では見れても組立現場ではA1図面で見る場合は見ずらい場合もあります。
その事に注意をしてユニット分けをします。
使用部品は組立図の右上か下側に部品表として記載します。
部品表には以下の事を記載します。
- バルーン番号
- 部品の名前
- 数量
- 材質
- 市販品
組立者は部品表があれば自分が今必要とする部品が一目で分かり、部品ストッカーから自分の作業場に1回で必要部品を運ぶ事ができます。
組立寸法は機械の機能を出すために必要な寸法です。
この寸法は必ず守る必要があるため公差と一緒に記載します。
組み立て者は組立寸法を守るために長かったら削り、短かったらシムを入れて対応します。
機械設計者は機械の機能を果たすためにどこが大事かを考え、組立寸法を組立図に記載します。
機械を使用するユーザー(お客様)向けの組図
お客様に対しては以下の情報を分かりやすく伝えてあげる組図が必要となります。
- 機械形状と構造
- 機械に使用されている部品
大切な事はお客様は「機械の素人」と考えないといけないという事です。
組み立て者向けの組図は「組立のプロ」用の図面の為、図面の見方や機械の常識を熟知しています。
しかしお客様は機械のプロではないです。
そのため組図を2次元の3面図ではなくて3D形状で描かれたアイソメ図を使用する事もあります。
アイソメ図は3DCADを使えば比較的簡単に作成する事も可能です。
3面図より「機械の形状や構造」を誰でも理解しやすいのがアイソメ図の特徴です。
もし3DCADがあれば組立図をアイソメ図で描くのも1つの手段です。
まとめ
- 計画図は仕様書を満たすための設計案
- 組立図は機械組立者とお客様用の図面
- 組立者用の組図には組立寸法を記載する
- お客様用の組図はアイソメ図で描いた方が分かりやすい