機械設計者の仕事内容とCADオペレーターの仕事内容は違います。
同じようにCADを使いパソコン上で図面を見ていてもやっている内容、責任、給料が違います。
今CADオペレーターをしてる方や製造業未経験でこれから機械設計者になってみたい方に向けて記事を書きました。
未経験から機械設計者になるには簡単ではありませんが設計職に就ける方法もあるので是非読んでみて下さい。
機械設計者の仕事内容
機械メーカーでは機械を作り売る事によって利益をあげます。売る品物を設計するのが機械設計者です。
そのためメーカーでは機械設計者を大切に育てようとします。機械を1から設計するために最低5年はかかると言われています。
メーカーによっては10年は設計しないと1人前と見てくれない会社もあります。
逆に言えば一人前の設計者であれば会社から高待遇を受ける事ができます。なぜならメーカーにとって設計者はお金を産んでくれる存在だからです。
機械設計者と言っても仕事内容はバラバラです。
・製品設計
・装置設計
・試作設計
会社が売るものや設計者が所属する部署によって内容が変わります。
しかしどの設計者でも共通する事は図面を描くという仕事です。
営業がとってきた仕事には必ず仕様書が付いています。
例えばアイスクリームを作る機械のメーカーだとします。
営業はアイスクリーム屋さんに1時間で何個アイスクリームが作れる機械が欲しいですか?と聞きます。
当然アイスクリーム屋さんはなるべく多くのアイスクリームを作りたいですがそのためには装置が大きくなったり強力なモーターが必要になり金額が高くなります。
そのため機械の値段と能力を天秤にかけます。営業もなるべく高い機械を買ってもらおうとアイスクリーム屋さんに自社の機械の魅力を伝えます。
お客様と営業で機械の能力と金額が決まったら営業から機械設計者に依頼がきます。
1時間で1000個アイスを作れる機械を作って欲しいとういう具体的な指示です。この指示を仕様書と言います。
仕様書に基づき機械設計者は機械の構造を練ります。
機械の構造をポンチ絵と呼ばれる簡単な絵を作り他の設計者や上司と相談します。
ポンチ絵で大まかな構造を決めた後はCADを使いパソコン上で具体的に機械を構想します。
CADではポンチ絵と違って具体的な数値を入れていきます。フレームの大きさや厚みに数値を入れて機械を具体化していきます。
また市販品と呼ばれるモーターやスイッチ等の一般的に売られている部品をCAD上で組み付けていきます。
これらの作業を組図作成と言います。この作業が機械設計者にとっての一番の仕事になります。
組図を作成できるようになるためには機械設計者としての様々な経験が必要です。
自分で組図を作成しそれを元にできあがった機械が完璧な事はありません。
必要な仕様を満たす事ができなかった、使い勝手が悪い機械になった、デザインがカッコ悪くなったり。そんな経験を機械設計者であれば誰しも経験します。
この経験を通じてより良い機械を設計できる設計者になる事ができます。
組図作成が終わると部品図を作成していきます。
部品図とは部品を作るために必要な情報が全て載っている図面です。
組図に付けた部品達を1つ1つ部品図に落とし込みます。これを組図のバラシと言います。
部品図には部品の形、大きさ、穴の数、材料の種類等全ての情報が載っています。これを見たら誰でも部品を作成できるものが部品図です。
部品図には部品を加工する為の全ての情報を入れる必要があるため作成に時間が掛かり、集中力も必要とされます。
間違った情報を入れてしまえば、できあがる部品も当然間違いになり機械を組み上げられなかったり必要な仕様を満たす事のできない機械になりかねません。
その為部品図を作成したら作成した人とは別の人が間違っていないか確認します。これを検図作業と言います。
検図は先輩社員や上司の方が行う会社が多いです。
検図後にさらに承認があり、設計部の課長や部長と呼ばれる役職がついた人が確認します。
承認が下りて初めて問題ない図面として認められます。承認された図面を設計者自ら発注、もしくは購買部門に図面を渡し発注してもらいます。
ここまでの作業が機械設計者の主な仕事になります。ここから図面を元に部品が作られ機械を組立ます。
この時に機械が部品の設計ミスで組めない場合等はもう一度設計→部品図作成→出図という作業があります。
設計者の仕事をまとめると、仕様書をもらう→ポンチ絵作成→組図作成→部品図作成→出図になります。
CADオペレーターの仕事内容
CADオペレーターの仕事は機械設計者を助けることが仕事になります。機械設計という仕事において一番大切になるのがポンチ絵作成と組図作成です。これは長年の経験や4力学の知識、加工の知識、お客様の現場の状況の理解等、が必要になる難しい仕事です。
この部分は機械設計者が行います。CADオペレーターは名前の通りCADを操作するのが仕事です。
CADを操作して組図から部品図に落とし込むバラシ作業がCADオペレーターの仕事内容になります。
機械設計者が作成した組図は3DCADで描かれた3次元的な図と2DCADで描かれた2次元的な図の2パターンあります。これは会社よってまちまちです。
組図を1枚1枚部品図に間違いなく、正確に落とし込む必要があります。そのため真面目な性格の人に向いています。大雑把な性格の人がやると寸法抜けや材料間違いといったミスが起き間違った部品ができあがる可能性があるからです。
また組図がそもそも間違っている可能性もあります。その事に気づいて設計者にきちんと伝える事も大切な仕事の1つになります。
優秀なオペレーターはCADを操作する事がすごいだけでなく、設計者にミスを伝え間違った部品ができないようにミスを事前に防いでくれる人でもあります。
CADオペレーターの仕事内容をまとめると組図から部品図へCADを使ってばらすのが主な仕事です。
機械設計者とCADオペレーター仕事の違い
機械設計者とCADオペレーターの違いは仕事内容にはっきりとした違いがあります。
設計部門の主な仕事である、仕様書をもらう→ポンチ絵を描く→組図を描く→部品図へのバラシ→出図の中で機械設計者は組図を描くまでを担当しCADオペレーターは部品図へのバラシと出図を担当します。
責任が重いのは機械設計者です。設計に関する責任は全て機械設計者にありCADオペレーターに責任がある事はありません。当然間違った部品図を作成してしまえばCADオペレーターの責任ですが出図の時に必ず機械設計者やその上司が検図をするので責任は彼らにあります。
そのため仕事のプレッシャー面では機械設計者の方が大きくなります。
しかしその分給料も機械設計者の方が必ず多くなります。
まずCADオペレーターを正社員で雇うメーカーは少ないです。
なぜならCADオペレーターは設計者に比べると経験が少なくてもできる仕事だからです。そのため人を育てるという意識が会社に働かないため、業績が悪くなったり、不況な時は解雇のしやすい派遣社員にCADオペレーターを任せています。
そのため仕事の安定性や給料面を考慮すると機械設計者の方が総じて待遇がよいです。
プレッシャーが少ない仕事を希望する人はCADオペレーターが向いています。
とにかく給料が高く、将来も安定している仕事を希望する人は機械設計者が向いています。
CADオペレーターが機械設計者になるためにやるべき事
機械設計者とCADオペレーターを比べた際に待遇面で圧倒的に良いのは機械設計者です。
そのため今はCADオペレーターでもいずれは機械設計者になりたい人やメーカーに就職するなら機械設計者として働きたいという人も多いです。
しかし機械設計者になるには容易ではありません。機械設計者の多くは高専や大学の工学部で数年間機械の専門について学んだ人達です。
彼らと同等の知識を得る事は容易ではありません。では専門分野について学んでいないと機械設計者になれないかと言えばそうではありません。
私がおススメする専門分野を学んでいなくても機械設計者になれる方法をお伝えします。
それは職種は何でもいいので機械メーカーで働く事です。
機械メーカー内にはたくさんの職種があります。理系分野で言えば設計、製造、品質保証、文系分野で言えば営業、購買、総務人事があります。
設計職で入ろうとすれば当然4力学の知識やCADの知識、機械加工の知識が求められます。
そのため未経験の人や今までCADしか触っておらずその他の知識が乏しい人が設計職に就くのは難しいです。
そのため狙うべきは機械メーカーの「○○職→設計職」のルートです。多くの機械メーカーでは設計職は不足しており人材を募集しています。しかし使えない人を採用する訳にはいかないので人は欲しくても採用したいと思える人がいないという現状もあります。
そのため機械メーカー内で活躍をして知識を得て自分で手を挙げれば機械設計職になれる可能性が高いです。
では○○職の○○は何がいいのか。それは製造です。
製造とは部品を加工したり部品同士を組み合わせて機械を組み上げる仕事です。
現場で1日中機械を触っている仕事とも言えます。
この職種は1日中機械と向き合うので当然ながら機械についての知識がつきます。
また図面で分からない事や不明な点を設計部門に投げかけるので機械設計者と仲良くなれる機会も多いです。
優秀な製造部門の人は設計者からも重宝され相談されます。それだけ設計部門と製造部門は密の関係性にあります。
もし今は機械設計者ではないCADオペレーターの人はまずは機械メーカーの製造部門に入社する事をおススメします。CADオペレーターとして派遣会社で働いていも機械設計者になれる可能性は低いです。
それよりも正社員として機械メーカー製造部門に入社して知識を蓄え、設計部門とも仲良くなり、時を見て手を挙げ設計者になるというのが機械設計者に最短です。
まとめ
- 機械設計者の仕事はポンチ絵作成、組図作成
- CADオペレーターの仕事は組図から部品図へのバラシと出図
- 機械設計者とオペレーターでは仕事の責任が違う
- 専門知識がなくても設計者になるには機械メーカーの製造部門に入社する