今回の記事はねじの締結原理と締め付け軸力に関する記事です。
ねじを深く勉強すると複雑な式を使用しなければなりませんがこの記事では最低限、機械設計者が知っておきたいねじ締結知識が書いてあります。
私も機械設計者として部品同士を締結する際はねじを使用しています。
ねじの選定に当たってはこれまでの経験で使用してしまうことが多かったですが「締め付け軸力」を学んで以降はこちらを参考にしてねじの選定をするようになりました。
「えいやー」で選定しがちなねじですが根拠を持って選定できるようにしていきましょう。
ねじの締結原理
ねじが部品を締結(止める)できる原理はおねじがめねじを引っ張ることによって発生する摩擦力です。
発生する摩擦力は3つあります。
- おねじとめねじの間の摩擦力
- 部品同士の密着による摩擦力
- ボルト頭(ワッシャー)と部品の摩擦力
3つの摩擦力が働くことにより部品と部品が締結できるのです。
この摩擦力達は相互に作用しています。
順番で言うとめねじがおねじに引っ張られることによりねじ同士で摩擦力が発生します。
その次にめねじが切ってある部品がボルト頭側に引っ張られていき、最後には部品と頭が密着し摩擦力が発生します。
同時に部品同士も密着しここでも摩擦力が生まれます。
逆に言えばこの3つの摩擦力のどれか1つでも弱まれば途端にねじがゆるみ、締結が解かれてしまうのです。
例えば
- ボルトの座面がボコボコになったので密着力が小さくなりねじがゆるんだ
- 機械の振動で軸力が低下しおねじとめねじの密着力が小さくなり部品がねじから外れた
- おねじとめねじの間に油が差されてゆるみやすくなった
上記のようなことが原因でねじがゆるまないようにするため、適切なねじ軸力を発生させる必要があります。
締め付け軸力計算方法
軸力とはねじが引っ張られることによって発生する締め付け力です。
軸力が大きくなればなるほど、部品同士を強く締め付けることができ、強固に固定することができます。
逆に強く締め付け過ぎて部品が傷ついてしまったり、壊れてしまう場合もあるのでねじの軸力を適切に設計することは機械設計者にとって大切なことです。
ねじの締め付け軸力は以下の式で計算できます。
ここで式の意味を説明します。
Fはねじ軸力です。
締め付けトルクTはねじを回すときのトルク値です。
このトルク値は標準的なものは決まっており通常の機械であれば標準締め付けトルクT系列を使用するのがいいでしょう。
ねじの呼び径は使用しているねじの呼び径を使います。
M5であれば5をM10であれば10を使います。
この時の注意点としては単位がメートルな点です。
M5であれば0.005を使用します。
最後にトルク係数kはねじ面の状態や材質によって変化する数値です。
現在は0.15~0.25で計算するのが一般的と言われています。
使用頻度が高いねじの締め付け軸力一覧
ねじの締め付け軸力はこちらの式で計算することができました。
上記の計算をしてまとめた結果がこちらになります。
トルク係数は一般的によく使用される0.2を使用しました。
ねじでは小さい部類のM3でも100kg程度の締め付け軸力があるのが分かります。
小型の機械でよく使用されるM6は1本で500kg近くの締め付け軸力があるのです。
ねじに関する参考サイトと本
ハードロック工業さんのねじ締結技術ナビ
ハードロック工業さんはゆるみどめナット「ハードロックナット」で有名な会社さんです。
そんなハードロック工業さんが運営しているねじ技術情報サイトです。
サイトではこのようなねじに関する解説があります。
- ねじ締結体の設計
- ねじ締付けの基本(斜面の原理解説編)
- ゆるみの把握の基礎知識:適切なねじの締付け
東日製作所さんの技術資料
東日製作所さんはトルクドライバ、トルクレンチを主製品にしているメーカーさんです。
東日製作所さんのホームページにはねじの基本的な技術についての資料が揃っています。
私もねじについて分からないことがあればよく利用させて頂いています。
技術資料には
- ねじ締付け
- 締付けトルクの検査
- 締付けの信頼性
こういった資料が用意されています(会員登録必要)
わかる! 使える! ねじ入門
わかる! 使える! ねじ入門 は機械設計者が機械を設計する上で必要になるねじの知識を全て網羅してある書籍です。
- ねじが締結できる理由
- 締付け軸力の計算
- ねじの強度
- 締付け方法別のメリットとデメリット
こういったことが分かりやすい言葉と図を使い説明されています。
専門書でありながら、誰でも分かりやすく、ねじ締結について学べる本です。
実際の設計シリーズ
実際の設計と続・実際の設計は学術的な話ではなく機械設計者が直面するであろう課題にフォーカスしその課題を解決するために必要であろう知識を授けてくれる本です。
ねじについては機械要素の欄で約10ページにわたり解説されています。
ねじの締付け原理からねじ周辺の設計方法、締付け工具の種類まで図を使い説明しています。
ねじだけではなく、機械設計全般について学びたい方はこちらの本を買うことをオススメします。
出典:続・実際の設計 改訂新版 機械設計に必要な知識とモデル (実際の設計選書)実際の設計研究会 (著)