機械設計の仕事が向いていないと思っている機械設計者の方は一定数います。
特に仕事を始めたばかりの頃は失敗を連発してしまいます。
ミスが続くと次第に機械設計の仕事が嫌になっていきます。
機械メーカーに入社した1、2年の頃の私も自分は機械設計の仕事は向いていないんじゃないかといつも思っていました。
- 先輩の言っている事が分からない
- 簡単なミスを連発してしまう
- 図面を描くのが遅い
こういった事が何回も起きると精神的にすごく辛くなりました。
しかし2021年で機械設計4年目になり気づいた事があります。
「この仕事は3年は続けないと面白さが分からない」そう感じるようになりました。
社内で扱っている機械をある程度理解するには3年は掛かるからです。
機械を理解しなければ機械設計を進めるのは大変困難になります。
そのためまずは3年同じ会社で頑張った方が良いです。
3年必死に頑張りそれでも機械設計が向いていないと感じれば転職しましょう。
機械設計者の転職についてはこちらの記事を参照して下さい。
機械設計が向いていない方でも品質保証部門や製造部門、サービス部門が向いている方もいます。
こういった部門は機械設計で身に着けた知識も役に立ちます。
サービス部門についてはこちらの記事を参照して下さい。
自分が機械設計に向いていないと思ってしまう場面
先輩の言っている言葉や用語が理解できない
入社して間もない頃は先輩同士の会話についていけない事が多いです。
機械設計の仕事は専門職なため専門用語が飛び交います。
それも会社独自の言葉であったり過去のJIS記号を使っている事があるため新入社員は困惑します。
私も機械メーカーに1年目で入社した当時、先輩に「イチブの継手持ってきて!」と言われて何のことかさっぱり分かりませんでした。
イチブって何のこと?と思いました。
イチブの継手は1/8管用ねじの事でした。
大学では管用ねじについては学んでいませんでした。
先輩に「管用ねじって何ですか?」と聞いたら「そんな事も知らないのか?大学で何を勉強してきたんだ?」と冗談ながらに言われました。
私は顔では笑いながらも内心ではショックでした。
自分はこんな常識的な事も知らないのかと。
しかし知らない事があるのは当たり前です。
何でも知っている人はいません。
分からない事があれば調べてその都度覚えればいいのです。
私は機械の参考書を使って自分の知らない言葉を勉強しました。
その時に使った参考書が実際の設計シリーズです。
実際の設計 改訂新版-機械設計の考え方と方法- (実際の設計選書)
続・実際の設計 改訂新版 機械設計に必要な知識とモデル (実際の設計選書)
この本は機械の事を体系的に学べる良書です。
実務で使える機械の知識を一通り学びたい方はこの本を参考にして下さい。
その他にも機械設計で使える参考書についてはこちらの記事で紹介しています。
ミスを連発してしまう
新入社員や転職して間もない頃は誰しもミスを連発してしまう時があります。
ほぼ全ての事が初体験のため失敗するのは当たり前です。
しかし今までの経験でミスをあまりしてこなかったり、有名大学出身でプライドが高い人は少しのミスで落ち込んでしまいます。
失敗を取り返そうと必死に頑張るが逆に空回りしてしまいミスを続けてしまう事もあります。
私も入社1年目の時、たくさんの失敗をしました。
一番落ち込んだ経験がお客様立会の機械性能テストでした。
上司から「今度お客様立会のテストがあるから手伝ってくれるか」と言われました。
私は一生懸命準備をし自分なりに完璧な状態でテスト当日を迎えました。
テスト当日お客様が見てる中で私はミスを連発してしまいました。
まず機械を動かそうとしても機械が全く動きませんでした。
私は冷や汗をかきながら何とか原因を突き止め機械を動かしました。
動かせた機械も性能的には全く不十分な結果に。
立ち会ったお客様もいまいちな表情でした。
テスト後、上司から「今日のできは30点だったね」を言われました。
この言葉は当時から3年以上経った今でも忘れる事ができません。
図面を描くのに時間が掛かってしまう
機械設計者の一番の仕事は図面を描く事です。
誰に対しても見やすく、正しい図面を描く事が設計者には求められます。
同時に図面を描くスピードも大切になります。
機械設計者の時間は工数と呼ばれるもので管理されます。
どのくらいの仕事をどのくらいの工数で処理できたかを管理者(課長や部長)が把握します。
スピードが遅い設計者は目をつけられる場合もあります。
図面を描くスピードが遅いと管理者はもちろん同僚からも仕事ができないと思われます。
それが本人にも伝わり「自分は仕事ができないんだ。機械設計者は向いていないんだ」と考えてしまいます。
先天的に図面を描くのが速い人はいます。
私が大学校時代にものすごいスピードで図面を描く同級生がいました。
そういった人達は空間認識能力がずば抜けている人達でした。
こういった特別な才能を持っている人にスピード面で勝つことは難しいです。
しかし才能がなくても平均以上の速さにする事は可能です。
私が実践している事は以下のような事です。
- テンプレートを使いこなす
- 使用しているCADについて誰よりも詳しくなる
- マウス、キーボードを会社支給の物ではなく自分で買ったものを使う
テンプレート化は図面を描くスピードを上げるためには必須です。
使用頻度の高い記号は全てテンプレート化しましょう。
粗さ記号、幾何公差は部品図で必ず使用すると思いますのでテンプレート化しておきましょう。
マウス、キーボードは会社から支給されているでしょうが可能であれば自分が最も使いやすいと思った物に変えましょう。
私はマウスをトラックボールマウスに変更する事によりCADの操作スピードが上がり、同時に図面を描くスピードも上がりました。
このマウスは腕全体を動かす必要がなく指先のみの操作でポイントを動かせるので腕へのストレスが全くありません。
私はこのマウス以外は使う気がしないくらい気に入っています。
トラックボールマウスについてはこちらの記事を参照して下さい。
納期が厳しい仕事が多く精神的につらい
機械設計の仕事でつらい事の1つが納期の厳しさです。
お客様は機械メーカーや設計事務所には厳しい納期を設定します。
営業マンがそれを断れればいいのですが今後の付き合い等を考慮して厳しい納期を承知で仕事を取る事が多いです。
そうすると設計部門は厳しい納期に間に合わせるために残業や休日出勤をして対応しないといけません。
そうすると設計者は精神的にも肉体的にもしんどくなります。
私も残業時間が月90時間を超えてうつ病になりかけた事があります。
その時の様子はこちらの記事に詳しく書いています。
自分だけでなく周りの同僚たちも同じように働いていると「みんな普通にやっている。しんどいのは自分だけなのか?俺はこんなに働けない」といった思いになります。
昭和の時代ならば月に50時間以上の残業は普通でしたが令和の時代は残業する事は良くない事とされています。
ライフワークバランスを大切にした働き方を国としても推奨しています。
もし残業を多くしないといけない状況になっているのであれば上司に相談してみましょう。
そして的確なアドバイスや改善案をもらえないのであれば転職する事も考えてみましょう。
エンジニアの転職についてはこちらの記事で詳しく書いています。
機械設計は3年やらないと仕事の面白さが分からない
世間ではよく「仕事は3年続けないと良さが分からない」と言われます。
これは機械設計の仕事にも当てはまります。
機械設計1年目は機械を覚える事が仕事
まず機械設計1年目は機械設計の仕事をやりません。
- 機械のテストの準備
- 書類のまとめ
- 古い手書き図面のCAD化
こういった業務を1年目はやります。
まずは会社で扱っている機械の事を学ぶ必要があるからです。
機械を学ぶ最速のやり方は機械に触れる事が一番だからです。
1年目に機械をたくさん触れ、機械の事を理解してから図面を描いていく事になります。
それが2年目以降になります。
機械設計2年目と3年目は設計者としての修行期間
図面を描き始めてからもまずは組図から部品図に落とし込むバラシ作業が主になります。
組図から部品図に間違いなく落とし込め、寸法も問題なく入れれるようになってから初めて機械設計をする事ができます。
機械設計を始めても最初は失敗ばかりなのが普通です。
まず図面が上司に承認されません。
自分より数十倍の経験を積んでいる上司を納得させる図面を描くのは簡単ではないです。
私も1日で20回以上も図面を見せた事があります。
この作業は精神的にとても辛い作業です。
しかしこれが自分を設計者として成長させてくれます。
設計のプロ中のプロである上司が図面を真剣に見てくれる機会は自分の社歴が長くなるにつれて少なくなります。
もし上司のチェックが厳しく図面が承認されないと悩んでいる方は成長のチャンスと捉えるようにしましょう。
もし図面が承認され実際に自分が考えた物ができあがっても喜ぶ事は少ないです。
なぜならば失敗が多く発見されるからです。私もよく失敗をして組立現場から連絡がきました
- 部品が取りつかない!
- ケーブルはどこを通すんだ!
- 動かしたら干渉するぞ!
こんな事ばかりでいつも落ち込んいました。
しかしこういったミスを経験して次は絶対に同じ失敗はしないぞと思い図面を描くようにしていました。
機械設計3年目は仕事が面白くなる
失敗も何回か経験すると同じ過ちを繰り返さないようになります。
そして1回の設計で自分が想定していた通りに機械が動くようになっていきます。
当たり前の事ですがこの経験は設計者に自信をつけさせる経験になります。
自信がつくので新たにチャレンジするようになります。
そこでも成功すると更に自信がついていきます。
このサイクルが回り始めると仕事が面白くなっていきます。
自分が考えた物が考えた通りに動きそれが市場(世の中)にでていく経験はこの仕事でしか味わえないものです。
機械設計のやりがいについてはこちらの記事にも詳しく書いています。
機械設計に向いていない人
ものづくりが好きではない
機械設計が絶対的に向いていない人はものづくりが好きではない人です。
自分でものを作ることがどうしても好きになれないという人はこの仕事に向いていません。
これは理屈ではなく性格的なものです。
小学生の頃でも工作が嫌いな同級生がいたと思います。
そういった子達がそのまま大人になって機械設計の仕事をしてもこの仕事を楽しむことが難しいです。
ルーティーンワークの仕事がしたい
機械設計の仕事にルーティーンワークはありません。
工場のようにベルトコンベア上で毎日同じ仕事をする事はありません。
常に新しい事にチャレンジする事を求めれらるのが機械設計です。
それが苦痛と感じる人、新しい事を考え続けるのが苦手な人は機械設計職には向いていません。
機械設計と似ている仕事でCADオペレーターという仕事があります。
この仕事は3D図面から2D図面を起こしたり、3D図面をモデリングする事が主な仕事です。
この仕事は機械設計者から指示を受けて上記の作業をひたすらこなしていきます。
こちらの仕事はややルーティーンワークになります。
もし機械設計は苦手でもCADオペレーターであればできそうと思える方は検討してみましょう。
機械設計の知識が生かせる品質保証やサービスエンジニアの仕事
機械設計の仕事を数年やってみてもこの仕事が苦手という方はいます。
そういった方は職種を変える事をおすすめします。
職種を変える時になるべく年収を下げたくない場合や今までの知識を生かす職種につきたい場合は次の2つの仕事がおすすめです。
- 品質保証、品質管理
- サービスエンジニア
機械メーカーの品質保証部門や品質管理部門は機械検査資料の作成や社内及び客先不具合対応をします。
検査資料を作る時やお客様の不具合対応する時、機械の知識は必須になります。
サービスエンジニアはお客様に納入された機械の修理やメンテナンス業務を行う仕事です。
サービスエンジニアリングの呼び方の他にフィールドエンジニアリングと呼ばれる事もあります。
毎日違うお客様の工場やオフィスに行って現場で作業します。
パソコンの前に座り1日中デスクワークをしている設計とは正反対の仕事です。
しかし必要とする知識は機械設計で使用していた事と非常に似ています。
サービスエンジニアの仕事内容についてはこちらの記事も参照して下さい。
機械設計のやりがいが分かる記事
こちらの記事では機械設計のやりがいについて書いています。
自分が設計した物が世の中で使われる面白さはこの仕事の最大のやりがいです。
機械設計がどうしても向かないと思う方へ
機械設計の仕事がどうしても向いていないと思う方は一定数います。
やりたくない仕事、好きではない仕事を一生続けていくことは非常に大変です。
「もうこの仕事は無理」と考えている方は転職することをオススメします。
特にまだ35歳以下の方であれば転職先が見つかる可能性は高いです。
さらに年齢は若ければ若い程、転職できる職種、会社は広がります。
現在の仕事を一生続けていくのは難しいと思う方はすぐに転職活動をしましょう。
転職活動の第一歩は転職エージェントへの登録とキャリアカウンセラーとの面談です。
キャリアカウンセラーはあたなの今後のキャリアについて一緒に考えてくれます。
転職エージェントでは費用は一切かかりません。
また仮に転職をしないという結果になっても問題ありません。
そのため、転職のプロ、仕事のキャリアのプロにまずは相談してみましょう。
転職活動のやり方とオススメ転職エージェントは以下の記事に書いています。