部品同士の締結でねじを使用する場合通常は1つの部品にバカ穴をもう一方の部品にタップ穴をあけます。
もしタップ穴同士を使用した場合は締結することができません。
タップ穴同士の場合は部品同士を密着させることができない(難しい)からです。
この記事を読んで頂くと部品締結の際にバカ穴とタップ穴を使う理由が分かります。
機械設計者なら当たり前のように使っているねじですが、なぜねじを使うと部品が締結できるのかを考えてもらうキッカケになれば嬉しいです。
通常のねじ締結はバカ穴とタップ穴を使う
部品同士の締結でねじを使用する場合、1つの部品にバカ穴をもう一方の部品にタップ穴をあけます。
バカ穴とは使用するねじの外径よりも少し大きい穴です。
M3だとΦ3.5、M6だとΦ7程度の穴です。
タップ穴はめねじが切られている穴をさします。
通常は図のように部品Aにバカ穴をあけ、部品Bにタップ穴をあけてボルトを部品Bのタップにねじ込むことにより部品A、Bが締結されます。
締結部品をタップ穴同士にしてはいけない理由
通常はバカ穴とタップ穴を使用しますが図のように部品A、B共にタップ穴をあけても締結はできるのでしょうか?
答えは締結できません。
その理由は2つあります。
- 位相がずれるのでねじが入らない
- 2本以上のねじで固定できない
位相がずれるのでねじが入らない
「ねじの位相」とはねじのつるまき線が円周上のどの位置にあるかをいいます。
例えば「ねじの始まりの位相が30°」、「ねじの終わりの位相は60°」のように使います。
ねじは円筒の筒につるが巻かれています。
もしタップ穴同士になった場合、「部品Aのめねじの終わりの位相」と「部品Bのめねじの始まりの位相」がピッタリ同じにならないとおねじが入ることができません。
おねじが部品Aには挿入できますが部品Bに入る時に位相がずれていたら入らないのです。
もし部品Aと部品Bに隙間が生じてもいいのであれば位相は簡単に合わせることができますがそうなれば部品同士が接触しないので締結ができません。
2本以上のねじで固定できない
ねじ2本以上で固定する場合には部品Aと部品Bのタップ位置がすべて正確に合っていないと1本のねじは入るがそれ以外が入らなくなります。
そのために通常は部品Aをバカ穴にして位置合わせのための逃げを作っているのです。
タップ穴同士にするメリット
ここまでタップ穴同士の締結はしないと述べてきましたが場合によっては使うことがあります。
例えば図のような方法であればタップ穴同士で締結することもできます。
ミスミで販売されている脱落防止ローレットノブを使い、ノブの逃げ部が部品Aのタップ穴にくるように設計します。
そうすると部品Bがローレットノブにより引っ張り上げられるので「ローレットノブ」、「部品A」、「部品B」が密着し締結されるのです。
この使い方の良い点はローレットノブを部品から取り外す際に部品Aに引っ掛けることができる点です。
部品Aが持ちづらかった場合にはローレットノブを取手代わりにして持ち上げることができます。
ねじに関する参考書籍
私がねじを勉強する際に参考にしている書籍を紹介します。
わかる! 使える! ねじ入門
わかる! 使える! ねじ入門 は機械設計者が機械を設計する上で必要になるねじの知識を全て網羅してある書籍です。
- ねじが締結できる理由
- 締付け軸力の計算
- ねじの強度
- 締付け方法別のメリットとデメリット
こういったことが分かりやすい言葉と図を使い説明されています。
専門書でありながら、誰でも分かりやすく、ねじ締結について学べる本です。
実際の設計シリーズ
実際の設計と続・実際の設計は学術的な話ではなく機械設計者が直面するであろう課題にフォーカスしその課題を解決するために必要であろう知識を授けてくれる本です。
ねじについては機械要素の欄で約10ページにわたり解説されています。
ねじの締付け原理からねじ周辺の設計方法、締付け工具の種類まで図を使い説明しています。
ねじだけではなく、機械設計全般について学びたい方はこちらの本を買うことをオススメします。
出典:続・実際の設計 改訂新版 機械設計に必要な知識とモデル (実際の設計選書)実際の設計研究会 (著)
実際の設計 改訂新版-機械設計の考え方と方法- (実際の設計選書)
続・実際の設計 改訂新版 機械設計に必要な知識とモデル (実際の設計選書)
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