部品同士を締結する際、最も手軽な方法はボルト(ねじ)を使用する方法です。
ねじは安価でどこでも手に入れる事ができるからです。
ねじの相手方にナットを使えば部品には穴をあけておくだけでボルトをナットに締め込めば部品同士を締結させることができます。
この利便性から多くの機械や構造品に使われています。
しかしねじ以外にも部品同士を締結させる方法があります。
絶対に接合部を緩ませたくない場合はねじよりも溶接が適しています。
樹脂部品をカバーで使用する場合はねじで接合するよりは接着剤を使った方が見栄えが良くなるケースもあります。
設計者は容易にねじばかりで締結を考えてはいけません。
適材適所を考慮した部品の接合方法を考えていきましょう。
簡単に各締結方法の特性を表にまとめたので特徴を把握しておきましょう。
脱着を繰り返す部品はねじ締結
今回の記事ではねじ以外の締結について説明しますがまずは簡単にはねじの長所と短所を説明します。
ねじの長所は使用する難易度の低さと脱着が非常に容易な点です。
ボルト・ナットや1つの部品にめねじを切る事により簡単に部品同士の締結を可能にします。
めねじを切るのも部品に下穴をあけてタップと呼ばれる専用の工具を回すだけで簡単に加工する事ができます。
また脱着がプラスドライバーや六角レンチを使用すれば簡単に取り外し、組付けができます。
そのため脱着頻度が高い部品にはねじはピッタリです。
大きな力が掛からない箇所については工具が不要で指で回すだけで脱着が可能なローレットネジが便利です。
ローレットネジについては以下の記事で詳しく書いています。
短所としては緩んでしまう可能性がある点です。
細かい振動や締結される部品の表面状態によってはねじが緩んで外れてしまう可能性があるところが欠点です。
自動車のホイールなどの絶対に緩んではいけないねじについてはトルクレンチを使用する事により適切な軸力を掛けて緩まないようにしています。
複雑な形状同士の接合は溶接
溶接は金属を熱によって局所的に溶解(溶け)させて接合する方法です。
溶接の特徴は接合部を強く固定できる点と複雑な形状でも簡単に接合できる点です。
一度溶接すればグラインダー等で切断をしない限り基本的には外せません。
それくらい強い接合です。
またねじの場合は基本的に面と面を合わせて接合します。
そのため面の面積が小さかったりパイプを等の薄板を締結させる事が非常に難しいです。
溶接では部品同士を溶かして接合するので母材の面積は問いません。
流体用の管継手に溶接継手が使われるのもその理由の1つです。
溶接が苦手する点は部品の型替えや取り外しがある場合です。
がっちりと接合してしまうため脱着が多い場合は使用しないようにしましょう。
また溶接は職人さんによる手作業が多いため、職人さんの腕に左右される事があります。
そのため品質の安定化という意味では他の接合よりも低いです。
溶接欠陥による不具合が発生する可能性もありますので設計者であれば溶接でどんなトラブルが発生する可能性があるのかは学んでおきましょう。
溶接トラブルについては以下の本で詳しく書かれています。
トコトンやさしい溶接の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)
溶接が使われる箇所は
- 薄板による箱物
- 複雑な形の繋ぎ合わせ
- 気密性を保持したい管継手
このような箇所です。
樹脂同士の締結で綺麗に仕上がる接着
接着は樹脂同士の接続でよく使用される方法です。
ポリカーボネートやアクリルの透明で機械の内部を見せたい時は接着面も綺麗に仕上がるため接着剤を使用します。
また強度も十分に出す事ができますが締結物が樹脂なので大きな力を掛ければ樹脂が割れてしまうのでその点は注意が必要です。
位置決めや再現性にはピン
ピンは締結というよりは締結補助として使われる機械要素です。
部品の位置決めや部品を外した時に元の位置に戻る再現性を出すために使用されます。
種類は
- 平行ピン(ノックピン)
- テーパピン
- 割ピン
- スプリングピン
があります。
テーパピンはくさび効果を利用したピンで高い位置決め性を部品に持たせる事ができます。
シャフトの周り止めにはキーが最適
キーは軸と歯車(ギアやプーリ)を固定したい時に使用します。
動力伝達用として使われる回り止めの一種です。
軸と歯車等のハブを締結させる場合は回り止めにはキーを使用し端面に抜け止め用のボルトで固定するのがよく使用されている方法です。
種類は主に
- 平行キー
- 勾配キー
- 半月キー
があります。
平行キーでもキー溝(キーではない)の寸法許容差によって種類があり、
- 滑動形
- 普通形
- 締込み形
にJISで分類されています。
半永久的な接合ができるリベット
リベットは溶接と同様に半永久的な締結ができます。
溶接に比べて熱を使用しないので部品の変形やひび割れを防止する事ができるのも特徴です。
航空機の羽で使用されたり東京タワーの建設にもリベットは活躍しました。
駆動体であれば伝動チェーンのリンクもリベットで固定されています。
リベットはハンドリベッターと呼ばれる人の手で使用できる工具で先端をつぶす事により部品同士を締結させます。
溶接と違い資格や大掛かりな工具を必要としないのもメリットの一つです。
締結用以外では洋服や財布等に装飾目的で使用される場合もあります。
軸とハブの締結にはシュパンリング
あまり知られていませんがシュパンリングと呼ばれる締結方法もあります。
シュパンリングはくさびの原理を利用して軸とハブを締結させる方法です。
使用方法としてはインナーリングとアウターリングから構成されるシュパンリングを軸側もしくはフランジ側からねじで締め付けていきます。
締め込んいくとテーパ状になっているシュパンリングのインナーとアウターが強く接触し摩擦力で固定されます。
軸とハブの締結方法でハブの側面から止めネジを使用して固定する場合があります。
その場合軸の側面に止めネジが接触するので軸に傷やバリが残ります。
傷やバリがあると機械の故障やオーバーホール等で軸を抜く時に抜けない場合があります。
シュパンリングの締結方法では軸もハブも全く傷つかないので機械のメンテナンス性を上げる場合にも適しています。
シュパンリングの具体的な使用例ははこちらの資料にまとめられています。