機械設計者になるのに4力学は必須ではない理由

機械設計者になるためには4力学が必須と言われます。
4力学は工業系の大学では必須科目になっている程重要な学問です。

設計者としては知っておいた方が良いですが必ずしも4力学全てをマスターする必要はありません。

その理由と4力学よりも大切なCADの操作と機械加工の知識について解説していきます。

目次

機械の4力学 運動力学 材料力学 熱力学 流体力学

機械設計の世界では4力学の習得が必要とされています。4力学とは運動力学、材料力学、熱力学、流体力学の4つです。これら4つを初めて耳にする方に向けて簡単に解説します。

運動力学は物体がどのような動きになるのかを予測する為の学問です。中学生や高校生でニュートンの運動方程式を習いました。

これは運動力学の基礎中の基礎です。ニュートンの運動方程式F=maは質量を持った物体に力を加えると力を加えた方向に加速度が生じるというものです。

材料力学は物体の壊れやすさを調べ、機械が壊れないためにはどのような対処をしたらよいかを学ぶ学問です。

飛行機の翼を設計する時にどれくらいの厚みにすれば壊れずに安全に飛行できるかを考えるのも材料力学の範囲です。

力学的な計算だけでなく金属材料についての知識も必要な学問です。

熱力学は熱というエネルギーを力エネルギーに効率的に変換させるためにはどうしたら良いかを研究している学問です。

自動車のエンジン設計者であれば誰もが勉強している学問です。

自動車のエンジンはガソリンと空気を混ぜた混合体を圧縮し爆発させて、爆発のエネルギー(力)をタイヤに伝えます。

良いエンジンは少ないガソリンから多くのエネルギーを取り出す事ができます。。そのために技術者が熱力学を勉強し燃費の良いエンジンの開発を仕事にしています。

流体力学は文字通り流体の力を学ぶ学問です。

流体とは水や油等の液体と空気やガスといった気体を指します。

例えば扇風機の設計をする時に流体力学が必要になります。

扇風機は風を発生させ必要な箇所(人のいる場所)に送り込む機械です。

風を発生させるためにどのような形の羽にすればいいのか考えるのも流体力学が必要になります。

風を送るために効率の良い羽は長年の研究により分かってきています。

これを学ばずに1から羽を作り、何個も何個も試作をして実験するのは時間もお金を無駄にします。

それを回避するためにも扇風機の設計者であれば流体力学を学ぶ必要があるのです。

4力学が機械設計で必要とされる理由

機械設計をするにあたり4力学を学ぶ必要があると言われます。

その理由は何ででしょうか?
それは4力学は全て未来を予測するための学問だからです。

機械には必ずその機械が果たすべき仕事を持っています。その仕事を果たすためには機械の動きや周りの環境を予測する必要があります。

洗濯機という機械は服の汚れを落とすという仕事を持っています。そのためには服の汚れがどうやったら落ちるかを考えないといけません。これも予測です。

服の繊維についた汚れを効率よく水で落とすにはどのような動きの水を作ればいいのかと考えるのが流体力学です。

濡れた服を脱水させるためにモーターを使い洗濯槽をどのくらいのスピードで回してあげたら乾燥するのかを考えるのが運動力学です。

洗濯槽を高速で回しても壊れない筐体(フレーム)はどのような形と大きさにすればいいのかを考えるのが材料力学です。

服を乾燥させるために洗濯槽の中を何℃にしてあげればいいかを考えるのが熱力学です。

洗濯機1台を考えるだけでも4力学を学ぶ必要があります。もし4力学を知らなければ予測が立てられないため洗濯機としての仕事を果たす事ができない、もしくは試作と実験を永遠とやり続ける事になります。

そのため機械設計においては4力学を学び「動きや状態の予測」ができる技術者が求められるのです。

機械設計者が必ずしも4力学を知っているとは限らない

4力学を学び設計に生かす必要があるとここまで述べました。

しかし機械設計が全員4力学に詳しい訳ではありません。
なぜなら設計する機械によって必要な知識が異なるからです。

例えばモーターの設計を考えてみましょう。

モーターは電気エネルギーを運動エネルギーに変換しシャフトがクルクル回る機械です。

モーターを設計する時に4力学は全て必要でしょうか。
運動力学と材料力学は必要です。モーターが必要になる「動き」を予測しその動きに耐えうる「材料」を選定する必要があるからです。

しかし流体力学と熱力学は必要でしょうか。モーターには流体は使われてませんし、熱力学が必要になる場面も想定されません。そのためモーターの設計においてはこの2つは必要がありません。

設計する機械によって必要な知識は全く異なります。そのため必ずしも4力学全てをマスターしなければ機械設計者になれないんだと思い込む必要はありません。

4力学よりも知っておくべき事があります。

機械設計者として必要なのはCADの操作

4力学よりも必要となるのは「CADの操作」と「機械加工の知識」です。

CADとはパソコンで図面を描いたり機械を設計するために必要なソフトです。

数十年前はドラフターという作業台を使用し鉛筆と定規を使い図面を描いていました。その作業をパソコンでできるようにしたのがCADです。

今ではCADを使っていない設計者はいません。手書きよりも圧倒的に早く綺麗に描くことができるからです。

逆に言うとCADができない設計者は設計者として通用しない事になります。
CADソフトは世の中にたくさんありますが日本の機械メーカーで使われているCADは数種類です。

2次元CADで有名なのはAuto CADとInventorです。操作方法はソフトによって全く違います。慣れてしまえば簡単ですが慣れるまでに時間がかかります。

そして一定数ですがCADの操作が苦手な人がいます。そういった方は機械設計者としては仕事を続けるのが大変です。

設計者の仕事の成果は図面です。図面の良し悪しで仕事ができる、できないを判断されます。そのため図面を描くうえで最も大切となるCADを使いこなせない人は設計者としては活躍できません。

CAD操作が上達するためにはとにかくCADに触れる時間を増やす事です。スポーツと一緒で練習すればするほど上達します。最初はぎこちなく図面を描いていた人も1年毎日触っていると考えないでも手が動き図面を描くことができます。

毎日CADのソフトを触っていても苦ではない人が機械設計に向いていると言えます。

機械加工の知識と機械設計者

機械設計者にとってCAD操作と同じくらい大切なのが機械加工の知識です。

機械加工とは工作機械と呼ばれる機械を使って材料を削ったり曲げたりして部品を作る事です。

機械設計者が自分で部品を作る機械はほとんどありません。
設計者の仕事は図面を作成する事であり部品を作る事ではないからです。

ではなぜ機械設計者が機械加工の知識が必要になるかと言えば部品の多くが機械加工で作られるからです。

もし機械加工の知識を持っていなかれば部品がどのように作ればいいかのイメージができません。

すると「この図面の部品ってどうやって作るんだ?」と機械加工現場から連絡が鳴り止まなくなります。そして部品の再設計が必要となります。納期が迫っている場合は精神的に追い込まれています。

そうならないためにも機械加工の知識を持っておくべきです。
実際にやった事がない事でも知識さえあれば図面を描くことができます。

ある自分が設計した部品の製作イメージは持てるだけの知識は身につけておくべきです。

まとめ

  • 機械の4力学とは運動力学 材料力学 熱力学 流体力学
  • 4力学を学ぶ理由は「動きや状態の予測」ができる技術者が求められているから
  • CADの操作は機械設計者であれば必須
  • 設計者であれば機械加工の知識を持っておくべき
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